ティーレマン/ミュンヘン・フィル@サントリー(11/3)
さて、コンサートの感想アップを再開しようと思う。
感想を書かねばと思うと負担になって、結局書かないでお終いということも多い。
ミクシィの日記には仲間内ゆえの気楽さで書いてる部分もあるが、見知らぬ人の目に触れるとなるとそうもいかないからだ。
でも今日、久しぶりに感動的なコンサートに出会った。
ミクシィにアップしたものに手を加えて、ここに掲載する。
圧倒的、と思えるコンサートがある。
良い演奏だった、上手かったね、という演奏なら山ほどある。
そうではなく、耳馴染みのはずの曲なのにまったく別の初めて聴くような感動がもたらされる、一年に一度出会えるかどうか、そんなコンサート。
ここ数年でいえば、2004年のS.ラトル/ベルリン・フィル@ミューザ川崎や、昨年のM.ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ@サントリー・ホールなどがそうだ。
それぞれで、ハイドンとブラームス、ドボルザークの交響曲でぼくに新鮮な感動を与えてくれた。
今日のクリスティアン・ティーレマン指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏も、そんな圧倒的な演奏会の一つだった。
おそらく個々の奏者のレベルはベルリン・フィルなどと比べれば最高というわけではないし、実際にミスもある。
しかしアンサンブルとなると、ミュンヘン・フィルは超一流だ。
ジャズのインプロビゼーション(即興演奏)などで阿吽の呼吸に魅せられることがあるが、それを100人のオケでやってしまうのがミュンヘン・フィルだ。
もちろん即興演奏をやっているわけではないし、ストコフスキーのようにアクロバティックにテンポを揺らしているわけでもないが、やはり阿吽の呼吸なのだ。
金管と木管が、弦楽合奏が、メロディの受け渡しや対旋律が、見事につながっていく。
それが、標題音楽の代表みたいなR.シュトラウスと、絶対音楽の代表のようなブラームスのどちらでも遺憾なく発揮される。
◆R.シュトラウス:交響詩『ドン・フアン』 op.20
この曲は学生時代に、まさにこのサントリー・ホールで演奏したことがある曲。
それだけにこの曲の難しさも熟知しているつもりだ。
疾風怒涛の速めのテンポを予想したが、それほど速くなく肩透かし。
だけど遅いというわけでなく、密度の濃い演奏。
弦は対抗配置、コントラバスは正面向かって左側。
金管がステージ最後列真ん中より右に向かってTp、Tb、Tubaの前にHr。
ぼくの席はP席最前列ほぼ中央で、ステージ最後列に配置されたティンパニの真後ろ。
正直ティンパニの音に圧されてオケの細かなところが聞き取れないどころか、クラシックのコンサートで初めて耳鳴りがした(苦笑)。
珍しいのは、トランペット3本のうち1番の人だけピストン(縦ラッパ、C管?)で、残る二人がロータリー・トランペット(横ラッパ)だった。
ベルリン・フィルの人は横ラッパでガーシュインのジャズでもなんでもやるので、機能的な問題ではないと思うのだけど、なぜ? 音色だろうか?
ちなみに楽譜は、1&2番Tpがin Eで、3番はin E またはCで書かれている。
しかし対抗配置で聴くドン・ファンってこんなにかっこよかったんだ。
ファースト・バイオリンとセカンド・バイオリンが3度違いのハーモニーを形作ると、それが右と左から聴こえてくるのがもぉ最高(笑)。
この曲だけでお腹いっぱい、自分が演奏したときのことも思い出されて目ぇうるうる状態。
◆R.シュトラウス:交響詩『死と変容』 op.24
この曲は思い入れないので、さらっとスルー(笑)。
配置などみな同じ。
いやいや、それではあんまりだけど。
途中「この曲、オルガンあったっけ?」と思わせるような響きにびっくり。
チューバとコントラバスの響きが綺麗でそう感じられ、驚かされた。
ここまでですでに開演から一時間近く。
おいおい、今日終わるの何時だ?(笑)。
◆ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op.68
まさに圧倒的。
実に演奏時間53分(笑)。
しかし、ドン・ファン同様に遅いと感じさせることはなく、サントリー・ホールの響きを使い切った熱演。
ちなみにEMIから出ているチェリビダッケ/ミュンヘン・フィルのブラ1は50分無い。
一聴して「遅い!」と感じるのに、だ。
しかも一楽章のリピートやってないから、単純比較できないかな。
ぼくのいちばんのお気に入りであるバーンスタイン/ウィーン・フィルは……あれ? CDが無いぞ?
全集盤を学生時代に買ったのにどこいった。
ブラームスの1番なんて、それこそ何度も聴いてきた。たぶん飽きるくらいに。
だからコンサートの演目にこの曲があると、それだけで避けてしまうくらいの通俗名曲のひとつ。
今回のティーレマン/ミュンヘン・フィルのコンサートも本命は今日ではなく、明日のブルックナー5番だった。
それなのに、ああそれなのに……(苦笑)。
第一楽章でリピートが実行されたとき、ぼくと右隣で聴いていた友人、左に座っている見知らぬ女性、3人で思わずうなずくしぐさをしてしまった(笑)。
確かにリピートやるのは珍しいものね。
隣の席の女性が第二楽章が終わったとき、「なんでこんなとこで咳すんのよ! まったく」と連れの男性にこぼしていた。
え? そんな気になる咳なんてあったかな?と音楽に集中していたぼくは苦笑いした。
その女性、第四楽章になっていわゆる歓喜の歌の旋律(って言わない?)が始まったあたりで洟をすすってる。
おいおい、風邪気味ならハンカチくらい用意しとけと思ったら、目もぬぐってる。
感極まって泣いてますよ!(^^;)
いや、ぼくもその気持ちはわかる、今日のところは大目にみよう。
でもな、連れの男性さん、ところどころ指揮のマネごとして席を揺らすのはやめろ(笑)。
そして最後の最後のコラールのところ、溜めに溜めて伸ばす!
これ以上伸ばせないくらいに、伸ばせば音楽が止まってしまう寸前に、再び音楽は動き出す。
思わず音楽に合わせて手に力が入る。
チェリビダッケが速く聴こえるくらい(というか実際チェリはここ速い、全体は遅いくせに)。
ここインテンポで振る指揮者は大嫌いです!(笑)
それゆえバーンスタイン盤が大好きだったのだが(バーンスタインより長く伸ばす演奏を知らない)、今日のティーレマンは超えてたのではないかなぁ。
気に入った!今度CD買う!w
◆アンコール:R.ワーグナー:楽劇『ニュルンベルグの親方歌手』より第一幕への前奏曲
むしろこの曲の出だしこそ駆け足気味の演奏。
高校生のころ、大学オケ、なんども演奏したこの曲。ドン・ファン以上によく知っている。
この曲は一番最後のところで、3番トランペットだけがオケの他のパートにはいっさいないことをやっている。
伴奏なんだけど、いわばソロ。
楽譜上は1&2番トランペットが分散和音を奏で、3番がタタタ ター ター(C3C3C3 C3 C4、か?)とやってる。
しかしミュンヘン・フィル、1番だけ分散和音やらせて、2〜3番に タタタ ター ターとやらせ、あまつさえクレッシェンドまでかけてる(笑)。
いや、ふつー3番にベルアップさせることはあっても、倍管にはせんだろ(^^;)
気に入った!今度CD買う!どの盤に入ってる?w
16時に始まり、20分の休憩を挟んで、終わってみれば18時30分。
まさかこんな長丁場になるとは。
ロックコンサートでのって拍手をしたり拳を突き上げたり、ジャズで素晴らしい妙技に「イェー!」と叫んだり、そういう肉体的に熱くなる感動もある。
しかしクラシック音楽は、体の内面、心の底から体全体が熱くなってくるような感動を味わうことがある。
どちらが上だとか下だとか高級だとかは言えないと思うが、個人的には後者の感動にこそ鳥肌が立つような感覚を覚え、深いものだと感じている。
まさに今日の演奏会は、そういった感覚を味わったごくごくまれな機会だった。
書くのに時間かかって、書き出しと途中であきらかに文体が変わってるけど、許してください(^^;)
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